【趣味の中古車ガイド】アウトビアンキA112アバルトが欲しい!!【Purchase Project 06】
中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、バブル期に日本で人気を集めたレトロな雰囲気の小さなホットハッチ、アウトビアンキA112アバルトの詳細に迫ります。

【SUMMARY】
エンジンとミッションを直列に繋げてフロントに横置きし、前輪を駆動するジアコーサ式レイアウト。その元祖はアウトビアンキ・プリムラで、これに次いだのが1969年に発売されたフィアット128と、アウトビアンキA112だった。
A112は、後に登場するフィアット127より小型のエントリーモデルだったが、サスペンションは前ストラット、後は横置きリーフを利用した4輪独立で、128や127と共通。エンジンはフィアット850と同じ直4OHV903㏄が当初搭載された。
このA112に、高性能仕様のアバルトが加わったのは1971年。アバルトによりエンジンは982㏄/58psまでスープアップされ、足周りや各部は強化。それ以外もアバルトの名に相応しい仕立てを施されていた。
その後A112アバルトは73、75、77、79年にマイナーチェンジされ、エンジンは1049㏄/70psに、ミッションは5速MTとなった。
1981年にジャックス・カーセールスが輸入権を獲得。A112アバルト・シリーズ5を日本で発売する。かわいい見た目ながら、走らせるとホットで、価格も輸入車としては安いことから、人気が急速に高まった。
1983年には、前後バンパーやテールランプなどを変更したシリーズ6が登場。更に翌1984年には、ロードランプ内蔵バンパーなどを採用したシリーズ7となり、これがA112アバルト最後の仕様となった。この最終型は1986年まで販売された。
【EXTERIOR & ENGINE】 小さな車体に詰まった熱い走りへの情熱

【INTERIOR & LUGGAGE】80年代的スポーティさに溢れたコクピット



ラゲッジルーム容量はそれなりにある。通常の状態ではトノーボードが備わる。後席バックレストは左右分割可倒。左右共に倒せば、かなり大きなものも搭載できる。
【IMPRESSION】 エンジンを目いっぱい回せばつい笑顔になる元気回復マシン

今回お借りしたA112 アバルトは、1983 年式のシリーズ6 だ。ただし別項でご紹介した通り、前オーナーが新品パーツを多用して各部をオーバーホールしており、更にエンジンや足周りにはライトチューンが施してある。
このため、運転席に座ってエンジンをかけただけで、この個体のメカニカルな部分が素晴らしい状態であるのがわかった。アイドリングは安定し、しかも吐き出されるサウンドは静か。早速ギアを入れて走り出した。
取材当日は非常に蒸し暑かったが、サイドウインドウを下げ、三角窓を開けておけば、走っている限りそれほど暑さは感じない。A112 アバルトにはオプションでクーラーが用意されており、装着された個体も少なくないが、現車はクーラーレスだ。
走り始めると、まずその元気なエンジンの吹け上がりに、ついニコニコしてしまう。決して高回転型というわけではないが、低回転からトルク感を伴いながら6000 rpm 付近まで一気に回る感じで、それが実に楽しい。
回せばサウンドも大きくなり、何やら凄く速く走っている気がするのだが、実際には隣のタクシーより加速が遅かったりするのがご愛敬。とにかく、5速MTを駆使してエンジンをぶん回して走るのが楽しいクルマなのだ。
もちろん車重が軽く、ハンドルはクイックなのでカーブも楽しい。道幅が狭くても「ライン取り」できるのも、小さいクルマならではの楽しさだろう。
久々に乗ったA112 アバルトは、最新車に慣れた身体を刺激する、元気回復マシンだった。

【TROUBLE SHOOTING】新品パーツは入手困難
- 壊れることを前提に付き合いたい
A112 アバルトは生産から40年以上経過しているため、ある程度壊れることが前提で、向き合う必要がある。
油脂類、ゴム類といった消耗品は早めの交換を心掛け、電気系も常にチェックをしながらなるべくトラブルを未然に防ぐよう注意したい。
ただし既に新品パーツが入手できないものも多くなっているので、メンテナンスは、なるべくノウハウが豊富なショップに依頼したい。 - 内外装、電気系の状態をまずチェック
A112 アバルトは5速MTを搭載する際、フレームに変更を加えており、この部分にクラックが入りやすいとのこと。またボディは錆びやすく、樹脂パーツは割れやすい。ボディや内装の状態が良いものを、選ぶようにしたい。
電気系は、どの個体もこれまでに少なからず修理を行っているはずで、現状きちんと各が作動しているかを確認したい。その上で必要な部分を交換するのが得策だ
【CAR'S DATA:取材車両詳細】

AUTOBIANCHI A112 ABARTH Sr.Ⅵ(1983年式)
全長×全幅×全高:3270×1480×1360mm/ホイールベース:2040mm/車両重量:710kg/エンジン:直列4気筒OHV/総排気量:1049cc/最高出力:70PS/6600rpm/最大トルク:8.7kg-m/4200rpm/サスペンション(F/R):ストラット/ウイッシュボーン+横置リーフ/ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム/タイヤ(F&R):135SR13/取材協力:ガレーヂ伊太利屋 http://garage-italya.co.jp/
【MODIFY POINT】 当時豊富にあったパーツを多数装着
今回取材したA112 アバルトはシリーズ6 だが、各部が当時豊富に存在したパーツでモディファイされている。そこでノーマル(写真)と異なる、主な部分を記しておこう。
エンジンは本国の草レース用というハイカムやチェーンテンショナーを装備。足周りはコニのショックアブソーバーを前後に装着、ホイールはクロモドラCD58(5 J)の国内最後の在庫を入手し、装着している。
剛性確保のためストラットタワーバー、フレーム・トラクションロッドを装着。運転席にはレカロ・シートを装備するが、純正もキープしている。
メーターの盤面は日本計器サービスにて、10000 rpmと200 km/hに書き換え。FIAMM エアホーンも装着する。その他細かい部分まで、オーバーホールや新品パーツへの交換は書ききれないほど行われており、これだけでも価値は非常に高いはずだ。
【CHRONOLOGY】アウトビアンキA112 国内販売の変遷
1969年10月: 本国でアウトビアンキA112がデビュー。プリムラに次ぐ横置きエンジン&ミッションのFWD。エンジンは直4OHV903cc。

1971年9月:高性能仕様のA112アバルトが誕生。エンジンは982cc/58PS 4MTで、足周りなどを強化。ボンネットやボディ側面下側を黒く塗ったツートーン塗装や、専用シートなどを装備した内装などが異なる(A112アバルト・シリーズ1)。

1973年春:ベース仕様のA112に装備の豪華なE(エレガント)を追加。A112アバルトがマイナーチェンジ(シリーズ2)。モノトーン塗装となり、バンパーやライトリムが黒い樹脂製となった。内装も変更された。

1975年1月:シリーズ全体がマイナーチェンジ。メーターなど内装を変更。A112アバルトも変更を受けシリーズ3となり、1049cc 70PSエンジン搭載車も登場。

1977年11月:シリーズ全体がビッグマイナーチェンジ。ルーフが20㎜高められ、グリルはヘッドライトリム一体型に、テールライトは横長タイプに変更された。A112Eはエンジン排気量を965ccに拡大。アバルトはシリーズ4に進化し、エンジンは1049ccのみとなり、ボンネットにエアインテークを装着。インパネやシートの形状も変更された。

1979年7月:再びシリーズ全体がマイナーチェンジ。ベース仕様にはエリート、ジュニアの新グレードが設けられる。A112アバルトはシリーズ5となり、グリルとテールライトを再度変更すると共に、樹脂製のホイールアーチやサイドプロテクター、リアガーニッシュなどを新採用。5MTを新たに搭載。シートや内装も変更された。
1981年2月:ジャックス・カーセールス(後にジャックス)が、フィアットと輸入代理店契約を結び、アウトビアンキA112の輸入元となり、4月から初めて日本市場で正規輸入車が販売される。
1981年4月:アウトビアンキA112アバルトを日本で発売。
■A112アバルト(シリーズ5)1050cc 70ps 5MT 左ハンドル

1983年4月:A112アバルト 1983年仕様(シリーズ6)を日本で発売。前後バンパー、Cピラーのディフレクター、テールランプ、ホイール、シートなどを変更。パワーウインドーがオプションで用意された。
■A112アバルト(シリーズ6)1050cc 70ps 5MT 左ハンドル

1983年10月:A112エリートを日本で発売。エンジンは965ccで48ps、5MTを搭載。タコメーターなど、装備はアバルトに近かった。
■A112 エリート 965㏄ 48ps 5MT 左ハンドル

1984年9月:A112アバルト1984年後期仕様(シリーズ7)を発売。フロントバンパーにロードランプを内蔵し、リアリフレクターパネルを追加。シートが黒とグレーストライプ(赤系統ボディ)、または赤とグレーストライプとなり、シートベルトを赤に変更。ブロンズガラス、サイドストライプ&アバルトステッカー、アバルトホイールカバー、センタールーフアンテナなどを新たに採用。また3連メーターがセンターダッシュ下に移動した。
■A112アバルト(シリーズ7)1050cc 70ps 5MT 左ハンドル

1985年10月:A112ジュニアを日本で発売。エリートと入れ替わる形で登場。エンジンはエリートより更に小さい903cc、42ps。4MTを搭載し、タコメーターなどのない簡素な装備。
■A112 ジュニア 903cc 42ps 4MT 左ハンドル
1985年12月:本国で、ジュニア以外のグレードの生産を終了。
1986年2月:日本でアバルトの最終モデルを発売、売り切れと共に販売終了。
1986年10月:本国でジュニアの生産も終了。
1988年夏:ジュニアの国内在庫の販売を終了。
【TOPICS】アバルト謹製プロトタイプがベース

1969年にA112が登場すると、アバルトは600Dに代わるレース用ベース車にすべく、プロトタイプを作製する。A112ラディアーレ・プロトティーポと呼ばれるこのクルマは、フィアットの意向で生産されず、その後ロードカーのA112アバルトが誕生する。

一方ベルトーネは、1969年にA112のコンポーネンツを使ったコンセプトカー、A112ランナバウトを試作する。ガンディーニ・デザインのミッドシップ車で、後のX1/9の前身とも言えた。
Text:中島秀之 Photo:奥村純一/宮越孝政(A112 ABARTH Sr.1&2&5&7)
Special Thanks:ガレーヂ伊太利屋 http://garage-italya.co.jp/
TIPO 2019年10月号より転載