[ナカジ~のティーポ的コラム15] グランツーリスモ・ワールドシリーズ2026は激戦必至! Part1 ネイションズカップ編
グランツーリスモ・ドライバーの世界一を決めるグランツーリスモ・ワールドシリーズ。その日本語実況を担当するナカジ~が、今季ここまでのレースの結果と、残り2イベントへの期待を披露。まずは個人戦であるネイションズカップから見て行こう。
2018年に始まったグランツーリスモ・ワールドシリーズ(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/events/gtws/)は、今シーズンで9年目を迎えました。その年のグランツーリスモ(https://www.gran-turismo.com/jp/)・ドライバー世界一を決めるレースシリーズで、私は初年度からライブ配信(https://www.gran-turismo.com/jp/live/)の実況アナウンサーを務めています。
何度かレギュレーションが変更されたり、コロナ禍でオンライン開催になったこともありましたが、ここ数年は年間4戦が行われています。ライブイベントとして世界各国で行われるのですが、8か国語で配信が行われていることもあり、どの国に行ってもシアターやホールの客席いっぱいのギャラリーが詰めかけます。
ブルーのユニフォームのネイションズカップは決まった12名のメンバーでワンシーズンを戦う。赤のユニフォームのマニュファクチャラーズカップは、Rd1~3を各リージョンの代表が戦い、ワールドファイナルのみ各チーム3人のドライバーで戦う。
カテゴリーは2つあり、ひとつは国別対抗戦で個人戦でもあるネイションズカップ、もうひとつは12メーカーの対抗戦であるマニュファクチャラーズカップです。
出場選手はシーズン前のオンライン予選で選抜されます。ネイションズカップはシードとなる前年のランキングトップ3の選手を除いた9名のドライバーを決定し、この計12名のドライバーがシーズンを通して戦っていきます。
マニュファクチャラーズカップは、やはりシーズン前の予選で3つのリージョンのメーカー代表選手を決定します。3つのリージョンとは、ヨーロッパ/アフリカ/中東、南北アメリカ、アジア・オセアニアで、それぞれ1名の代表を選抜。Rd.1からRd.3はそれぞれのリージョン代表同士がレースを行い、ワールドファイナルのみ、各リージョン代表3名がチームを組んで戦うことになります。
またワールドシリーズは、Rd.1からRd.3で上位6人までポイントが獲得でき、ワールドファイナルで獲得したポイントにその選手権ポイントが加算され、チャンピオンが決定します。
左_Rd.1の舞台ミラノの「テアトル・リリコ」はドゥオーモのすぐ近くで、イタリアでも有名なシアターだそう。右_Rd.2はポリフォニー・デジタルの社員の皆さんと関係者が選手を盛り上げた。
さて今シーズンのグランツーリスモ・ワールドシリーズ(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/championships/2026/)ですが、ここまで5月のRd.1ミラノ、8月のRd.2東京の2イベントが終了しました。実はRd.1は3月にアブダビで行われる予定だったのですが、中東情勢悪化により中止となり、その代わり8月にポリフォニー・デジタル東京スタジオでRd.2として行われました。ポリフォニー・デジタルはグランツーリスモを開発している会社で、Rd.2は同社の社員の皆さんと関係者だけが見守る中で行われました。この後Rd.3は10月にシンガポールで、ワールドファイナルは12月に再び東京で行われます。因みにシンガポールのイベントのは現在観戦チケットが販売中(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/events/gtws2026/singapore/ticket/)です。



レッドブルX2019コンペティションはエイドリアン・ニューウェイがデザインしたマシンで、まさにタイヤカウルとキャノピーがついたF1といった感じ。
それではまずネイションズカップから、今シーズンここまでの展開と、今季の展望をご紹介しましょう。ネイションズカップは、2023年にチーム戦として行われたこともありましたが、基本的にドライバー個人の速さを競う戦いです。このためスプリントレースやワールドファイナルのセミファイナルレースでは様々な車両が使われるものの、決勝(グランドファイナル)レースは常にレッドブルX2019コンペティションによるワンメイクレースとして行われています。このマシンは、グランツーリスモとエイドリアン・ニューウェイ氏率いる(開発当時)レッドブル・レーシングが共同で開発したオリジナルマシンで、816psのNAエンジンを搭載する車重650kgのいわばカウルのついたF1です。


左_Rd.1のスプリントレースは、戦前から1950年代のヒストリックカーを使ったミッレミリアをイメージしたレースだった。右_決勝レースはポル・ウラが落ち着いたレース運びで制した。
今季の開幕戦ミラノ(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/events/gtws2026/milan/)では、ミッレミリアをイメージしたヒストリックカーによるスプリントレースが行われた後、レッドブルX2019を使った決勝レースが行われ、スペインのポル・ウラが優勝しました。ウラは21歳ですが、3人のチーム戦で行われた2023年のネイションズカップを制したスペイン・チームのメンバーの一人で、昨年のチャンピオンであるホセ・セラーノの後輩に当たります。
スペインはワールドシリーズ開始当初から多くの名ドライバーを輩出している強豪国で、ネイションズカップでは過去3回タイトルを獲得しています(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/events/history/)。

その中でも、昨年全4戦中3勝、2位1回という圧倒的な強さでチャンピオンとなったホセ・セラーノ(23歳)は、速さと強さの面で現在最高のドライバーと言える存在です。3種類のドライタイヤを使い給油も必要な、モンツァ・サーキットを舞台とした決勝レースで、2番手スタートだったウラは常にトップ争いを演じ、最強の先輩セラーノをおさえて優勝を飾りました。2位セラーノ、3位は日本の宮園拓真(26歳)でした。
日本の第一人者で、2020年と2024年に2度ネイションズカップ・チャンピオンに輝いている宮園は、実車のニュルブルクリンク24時間レースにスープラで出場した翌週にこのイベントに参加しており、練習不足の面があった中での3位表彰台はさすがでした。


Rd.2のスプリントレースは、500ps程にパワーを揃えた市販車のレースで、NSXのドルモン、R34GT-Rのセラーノ、S2000のガロがトップ3に。決勝レースもこの3人がトップを激しく争い、セラーノがガロに接触してペナルティを課された。
続く8月のRd.2東京(https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/events/gtws2026/tokyo/)では、500ps程のロードカーを使ったスプリントレースでフランスのキリアン・ドルモン(22歳)が勝ち、セラーノが2位となりました。ドルモンは2022年にスバルでマニュファクチャラーズカップ王者になった実力派です。まだネイションズカップのタイトルは獲得したことはありませんが、その速さはよく知られているドライバーです。
Rd.2はドルモンとガロが1-2で、久しぶりにセラーノとウラのいない表彰台となった。ただしルーキーのモレノが3位となって、スペイン勢の活躍は続いた。
決勝レースはディープフォレスト・レースウェイ(オリジナルコース)逆走で行われ、終盤にドルモン、セラーノ、そして2021年のチャンピオンであるイタリアのヴァレリオ・ガロ(26歳)による三つ巴の優勝争いになります。激しいバトルの中でセラーノがガロに接触してペナルティを受けたことで、ドルモンが優勝、ガロが2位、3位には今季から参戦を始めたスペインの新鋭サムエル・モレノ・バエサ(18歳)が入りました。セラーノは5位、ウラは6位、前日にスーパー耐久のレースでFFのTCRマシンに乗っていた宮園は8位に終わっています。この結果シリーズポイントは、ドルモンが9、セラーノとウラが7、ガロが5、モレノ、國分、宮園が4で続いています。






左上からポイント順に、ドルモン、セラーノ、ウラ、ガロ、モレノ、宮園の各選手。はたして今年チャンピオンは誰の手に?
さてこうして2戦を終えて見えてきたのは、セラーノは昨年同様の速さは健在なれど、その速さに拘り過ぎているのではないか? ということです。Rd.2の決勝でも、他のドライバーが燃料をセーブする走りを心がける中、全開に近い走行を続け、給油で失ったタイムは速さで取り戻せばいいといった戦略を採っていました。速さに強い自信があってこそですが、トラックポジションを失えばコース上でオーバーテイクする必要があるわけで、その分接触のリスクも高まります。連覇を実現するには、その辺りを後半戦でどう考えるかにかかっていそうです。
一方セラーノの後輩ウラは、スプリントレースで結果を出せれば、波に乗って決勝でも速さを見せられるタイプのようです。Rd.2の決勝では、トップグループの後方につけていましたが、これを逆転するための戦略をしかけたりはしませんでした。流れが悪い時に上位、特に先輩セラーノと違うことをする勇気が持てるかが課題かもしれません。
ドルモンのRd.2での優勝は、ネイションズカップでは2024年のRd.3東京以来のことでしたが、ここ数年やや精彩を欠いていた感があったのを払拭する走りを見せてくれました。最速セラーノについていける速さは、昨年よりドライビングが進化している証でしょう。東京でのネイションズカップで2勝目を挙げたこともあり、今季のワールドファイナルが再び東京で行われることを考えると、悲願のチャンピオンに向けて追い風が吹いている感じです。
今季ネイションズカップだけの出場に絞った宮園は、仕事と実車のレースが忙しいこともあって、自身が納得できる練習を積めていないのが悩みのようです。Rd.2終了後にはかなり悔しい表情を見せていましたが、インターバルの空くRd.3シンガポールでは、練習を重ねて再びあの驚異的な速さを見せてくれることに期待しましょう。
同じく今季ネイションズカップだけに絞ったガロは、Rd.1、Rd.2ともに速さは見せており、特にRd.2は2位となって強さも証明してみせました。Rd.1のレース終盤の単独スピンが悔やまれますが、残り2戦で2024年Rd.2プラハ以来の勝利を挙げられるかに注目です。
おそらくこの5人が、チャンピオン争いを繰り広げることになると思いますが、ルーキーのモレノや、2022年以来のネイションズカップ参戦となった國分涼太(27歳)もポイント上位につけており、彼らを出し抜く可能性を秘めています。Rd.3シンガポール、そしてワールドファイナル東京がどんな戦いになるのか今から楽しみです。ぜひライブ配信をお見逃しなく!
Text:中島秀之 Photo:Gran Turismo