ティーポOBの嶋田智之さん【アルファロメオ・ジュニア】緊急試乗リポート!【前編:エレットリカ】

ジュニア、結構いいぞー!
ハイブリッドもピュアEVも、どっちも結構いいぞー!
……いや、最近ではほぼなくなったけど、ちょっと昔は“WEBに原稿を書くときには結論を先に書け”なんて言われることが多くて、それを思い出したから今さら従ってみた。なぜ思いだしたのかと言えば、僕自身が結論を急いで皆さんにお伝えしたかったから。ついに日本デビューを果たしたアルファロメオ・ジュニアにいち早く試乗することができ、期待以上に楽しく気持ちよかったから、おかげで思いのほかゴキゲンなのだ。われながら単純な男だと思うけど。
アルファロメオ115周年目の誕生日となる6月24日に東京都内で催されたプレス発表会では、壮大なオペラとともにアルファロメオ・ジュニアをアンベール。アルファロメオ・ブランドのサント・フィチリCEOのビデオメッセージや、来日したチーフエクステリアARデザイナーのボブ・ロムケス氏によるプレゼンが行われるなど、新型ジュニアに対するStellantisジャパンの注力ぶりが示された。
ジュニアについては、おそらく皆さんも御存知のことだろう。上陸したてのホヤホヤだから、ちょうどいろいろな自動車サイトやニュースサイトなどを賑わせてるタイミング。なので、ここではネチネチと概要を掘り下げるようなことはしない。しないんだけど、知らない人もいるんじゃないか? とちょっと不安になったりもするので、軽くおさらいだけしておこうか。

ステルヴィオ、トナーレに続いくアルファロメオ第3のSUV、それがジュニアである。2019年までのミト、2021年までのジュリエッタの流れを汲むひさびさ登場のコンパクト・アルファであり、アルファロメオ第2の電動化モデルでもある。ジュニアの名のもとに“エレットリカ”と呼ばれるバッテリーEV(以下、BEV)と、“イブリダ”と呼ばれる48Vマイルドハイブリッドのモデルがラインナップされていて、もちろん日本国内の展開もその2本立てだ。日本ではBEVの普及状況などを考えてひとまずはイブリダをメインストリームに据えるようで、ふたつのグレードとひとつの特別仕様でのスタート。エレットリカは1グレードでのスタートとなる。ただ、ジュニアも元はeCMPプラットフォームを用いたBEVとして開発がスタートしているし、昨年お呼ばれして参加させていただいた国際試乗会ではジュニアの最強モデルであるBEVの“ヴェローチェ”のみの試乗だった。なので、ここはひとつ、BEVのエレットリカからお話を進めさせていただこう。


ピュアEVのジュニア・エレットリカ・プレミアムのスクデット(盾グリル)には斬新なプログレッソ・デザインを採用。価格は556万円。
ぶっちゃけ、今回この“プレミアム”というグレード名を持つ標準版BEVモデルというべきエレットリカに試乗するにあたって、僕はそれほど大きな期待を抱いてはいなかった。280psと345Nmを発揮し、シャシーも特別な仕立てとなるヴェローチェ、つまり最もすごいジュニアを体験して感銘を受けちゃってるからだ。54kWのバッテリーを積んでWLTPモードで最大494kmの航続距離を得られるのはいいとして、パワーとトルクは156psと270Nmだから、もしかしたらちょっと物足りないないかも? ぐらいに思っちゃってたところもあった。
うーむ……ナメてました。謝ります。ごめんなさい。

走りだしてみると、これってホントに156psだっだっけ? と軽い疑念が湧いてくるぐらいの力強い加速を見舞ってくれたのだ。立ち上がり加速も充分、伸びも充分。スピードもしっかりついてくる。BEVでときどき出くわす唐突にトルクを立ち上げて強力な加速感を演出するようなわかりやすい=わざとらしい制御にはなってなくて、右足の加減によるトルクコントロールのしやすさがあって扱いやすいと感じたりするのに、そこからグッと右足を踏み込んでいくと、あくまでも自然に感じられる範疇で気持ちよくパワーやトルクを解き放っていきながら、しっかり素早く確実に速度を積み上げていく、といえばいいか。とにかくパフォーマンス的にはしっかり満足できるレベルにあって、ヴェローチェ、いらないんじゃないか? なんて思った瞬間すらあったほどだ。




このパワートレーン、同じステランティス・グループの中のフィアット600eやジープ・アベンジャーとスペック的にも共通なのだけど、姉妹たちよりどことなく速い気がするしスポーティさを強く感じるのは、モーターの制御に手を入れ直してたりするのか、単にアルファロメオに乗ってるというプラシーボ効果でそう感じるのか、何もアナウンスがないから正確なところはわからない。けれどスピード感やテイストといった部分は、パワートレーンのみならず車体だとかサスペンションだとかを含めたクルマの総合力が作り上げるもの。さまざまなパートにアルファならではの手が入ってるわけだから、そんなふうに感じれられても不思議はないだろう。

例えばハンドリング。いかにもBEVらしい重心高の低さや重量バランスの良さがはっきりと効いて、素直に素早くコーナーを駆け抜けることができるところは姉妹たちと変わらない。ところが、味つけが明らかに異なってるのだ。姉妹たちよりサスペンションが引き締められてるのは確かだけど、といってガチガチとした硬質で下品な感触はまったくなくて、しっとりと滑らかによく伸び縮みする。だから4つのタイヤそれぞれに掛ける荷重をアクセルやブレーキのペダル操舵でコントロールしていきやすい=クルマに“こう曲がりたい”という意志を伝えやすく、当然ながらそれに忠実に応える懐の深さも持ちあわせてる。車体を適度にロールさせ、動きを適度なところで抑え、そのロールを上手く利用しながら綺麗にコーナーを曲がらせてくれるのだけど、そんなところに昔ながらの“らしい”テイストが見てとれたりして、僕はかなり嬉しくなった。街でも高速道路でもワインディングロードでも、BEV+アルファロメオの楽しさや気持ちよさ、美味しさを存分に味わうことができて、だいぶ満足感が高いよな、なんて思えたのだった。
【後編イブリダに続く】写真:山本佳吾 Keigo Yamamoto
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