【趣味の中古車ガイド】初代フィアット・パンダが欲しい!!【Purchase Project 01】
中古車として人気の高いモデルの概要、ヒストリー、バリエーション、トラブルシューティング、インプレッションなどを紹介するティーポの人気連載【Purchase Project】から、シンプルなメカニズムとデザインで、今も高い人気を誇る初代フィアット・パンダの詳細に迫ります!

【SUMMARY】
初代フィアット・パンダは1979年11月に発表。設計はジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当、シンプルかつコストが安い大衆車として生を受けた。サスペンションは前ストラット、後ろは当初リーフだった。空冷2気筒エンジンの30と、水冷直4OHV903㏄/45psの45が用意されていた。
【EXTERIOR & ENGINE】シンプルだが明るさ全開のキャラクター
日本には1980年に少数が並行輸入された後、1982年からJAXにより45の正規輸入が開始された。1984年には、965cc/48psエンジンとパートタイム4WDを組み合わせた、4×4を導入。それぞれにダブルサンルーフ仕様も用意されていた。1986年に、直4SOHC999cc/45(4×4は50)psのFIREユニットを搭載し、リアサスペンションをΩアームに改め、各部を改良した中期型が登場。1989年には輸入元がサミットモータースなどに変わり、インジェクション装備の45psエンジンに変更。全車5MTになった。
1991年に富士重工製ECVTを装備したモデルを初導入(44ps)。輸入元がフィアット・アンド・アルファ・ロメオ・モータース・ジャパンとなった1992年には、グリルや装備が異なる後期型を日本で発売。翌1993年には、エンジンを1108cc/50psとした最終型1100が登場。FFの5MTとECVT、4×4の3種があったが、1996年にFF/5MTの輸入を終了。更に1999年に、残る2タイプの正規輸入も終了した。その後2003年に本国生産が終了した。
【INTERIOR & LUGGAGE】鉄板むき出しでも幸せになれるインテリア
通常状態でもトランクスペースは意外に広いが、バックレストを倒せば大きな物も搭載可能。更にダブルフォールディングさせれば広大になる。後席は左右に3点式ベルトを装備する。
【IMPRESSION】セレクタを選んだとしても予想以上にキビキビ走れる
今回お借りしたのは、1995 年式の1100セレクタ、Wサンルーフ仕様。50 psのインジェクション付エンジンにECVT を組み合わせたモデルだ。まずその内外装の状態の良さに驚いた。もちろん年式相応の部分もあるにはあるが、ボディの塗装やシート生地の美しさなど、10万㎞以上走行している四半世紀前の大衆車とは思えないほど……。前オーナーが大切にしていたのが偲ばれる。
座面も背面も薄いのに、座ると包まれるように感じられるシートに収まりスタートさせる。走り始めても好印象は変わらなかった。低回転からピックアップよく元気に吹けるエンジンと、予想以上にレスポンスが良くてスムーズなECVT のお陰で、実に軽快に走るのだ。

パンダはMTに限るという意見も理解できるが、状態の良い個体であればセレクタを選んでも、その明るいキャラクターを十分に満喫できるだろう。
ブレーキは踏み始めの制動が弱めだが、踏めばきちんと止まってくれる。ノンパワーのステアリングも、走り出してしまえば軽く、ハンドリングも素直だった。もっとも車庫入れなど据え切りに近い速度域では、重いと感じることもあった。走行中はインパネのどこかから、「キシキシキシ……」と何かが擦れる音が聞こえたし、振動も騒音も今の大衆車と比較したら凄く大きいだろう。だが「それが何か?」と開き直れる強い魅力がパンダにはある。当時を知る世代はもちろん、若い世代にもぜひお勧めしたい。
【TROUBLE SHOOTING】年式相応にケアは必要




- 基本的に丈夫だが消耗品は早めの交換を
初代パンダは構造がシンプルゆえ、この時代のイタリア車としては、比較的トラブルが少ないという。とはいえ新しいものでも車齢は20 年を超えるため、消耗品は早めの交換を心掛け、労りたい。エンジンオイルは相性の良い部分化学合成油を、3000~5000 km を目安に交換したい。またサスペンションのブッシュやエンジン&ミッション・マウントなどは、3万㎞ごとに交換したい。 - ECVTは修理が困難なので丁寧に操作を
初代パンダで最もトラブルが心配なのは、富士重工(現スバル)製のECVT だ。不具合が生じた場合、既に補修用パーツの供給が終了しており、中古部品と交換するしかないのだという。このためセレクタが希望の場合、購入時に振動や滑りをチェックの上、購入後はセレクターレバーの丁寧な操作を心掛けたい。また始動直後は無理に回転を上げず、オイルも早めに交換したい。 - 電気系やクーラーは経年劣化を覚悟
電気系のトラブルはそれなりに起こる。まず点火系だが、アイドリングで失火する症状が出たら、デスビ周りのチェックが必要となる。またパワーウインドーは、モーターの劣化などは覚悟したい。クーラーは日本製ユニットを日本で装着している場合がほとんどだが、それでも経年劣化によるガス漏れや電気系の不良などは起こりやすい。作動時に違和感を感じたら早めにチェックを。 - 樹脂製パーツや幌は基本的に修理可能
樹脂製パーツの劣化も、ある程度覚悟が必要だ。フューエルキャップが開きにくくなったり、インパネのスイッチが割れたりはよくあるそうだが、パーツはあるという。Wサンルーフの幌は、社外品で修復可能なので心配ないが、固定用ベルトなど入手が難しいパーツもあるそう。また最終期の細かい柄のシート生地は擦れやすいが、同じ柄の生地が入手不可能な場合もあるので注意したい。
【CAR'S DATA:取材車両詳細】

FIAT PANDA 1100 SELECTA CANVAS TOP(1995年式)
全長×全幅×全高:3405×1510×1485mm/ホイールベース:2165mm/車両重量:740kg/エンジン:直列4気筒SOHC8バルブ/総排気量:1108cc/最高出力:50ps/5250rpm/最大トルク:8.6kg-m/3000rpm/サスペンション(F/R):ストラット/Ωアーム/ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム/タイヤ(F&R):155/65R13/取材協力:コレツィオーネ http://www.collezione.co.jp/
【CHRONOLOGY】初代フィアット・パンダ国内販売の変遷
1979年11月:フィアット・パンダが発表される。
1980年:欧州市場での販売を開始。秋に並行輸入により日本に上陸。
1982年2月:JAXカーセールス(1986年よりJAX)が新たな輸入元となり、パンダの販売を開始。日本仕様は直4OHV903㏄+1キャブ45ps/6.5kg-m+4速の45で、車名は141パンダ900。
■141パンダ900(45)直4OHV903cc+1キャブ45ps 4速MT 左ハンドル

1982年5月:手動式Wキャンバスルーフを備えた、ダブル・ルーフ仕様を追加発売。
■141パンダ・ダブル・ルーフ 直4OHV903cc+1キャブ 45ps 4速MT 左ハンドル
1984年7月:前年7月に生産を開始したパートタイム4 WDの4×4の国内販売を開始。車高が1 6㎜高く、エンジンは直4OHV965㏄+ 1 キャブ 48 ps/7 .1 kg-mで5 速MT。フロントグリルが斜め線の入る樹脂製に変わった。その後FF仕様も新グリルに変更。
■141パンダ4×4 直4OHV965 ㏄+1キャブ 48ps 5速MT 左ハンドル
1985年5月:4×4にダブルルーフ仕様を追加発売。
■141パンダ4×4 ダブル・ルーフ 直4OHV965cc+1キャブ 45ps 4速MT左ハンドル

1986年8月: 同年1 月に本国で発売されたモデル(セリエ2 /中期型)を日本で発売。日本仕様のパワーユニットは直4 SOHC 999㏄+1キャブ(FIREユニット)のみで、FF の1000 CLが45 ps/8 .2 kg-m(4速MT)、4×4が50 ps/8 .0 kg-m(5速MT)。また前後バンパー形状、FF のリアサスペンション、インパネ、シートなど各部が変更され、三角窓は廃止された。
■パンダ1000CL 直4SOHC 999 ㏄+1キャブ 45ps 4速MT 左ハンドル
■パンダ1000CL ダブル・ルーフ 直4SOHC 999㏄+1キャブ 45ps 4速MT 左ハンドル
■パンダ4×4 直4SOHC 999 ㏄ +1キャブ 50ps 5速MT 左ハンドル
■パンダ4×4 ダブル・ルーフ 直4SOHC999㏄+1キャブ 50ps 5速MT 左ハンドル
1989年2月:本国で1987年から発売されていたインジェクション仕様を国内で発売。直4SOHC 999㏄+インジェクション45ps/7.5kg-m 4速MT。FFと4WDの2種。
■パンダ1000CL i.e. 直4SOHC 999㏄+インジェクション 45ps 4速MT左ハンドル
■パンダ4×4 i.e. 直4SOHC 999㏄+インジェクション45ps 5速MT 左ハンドル
1989年3月:輸入元がJAXからサミットモータースジャパンとチェッカーモータースに変更。取り扱い車種に変更はなく、1000CL、1000CL i.e.、4×4、4×4 i.e.の4種。ダブル・サンルーフはこれ以降オプションに。
1989年6月:1000CL i.e.に代わる豪華装備のSUPER i.e.を国内で発売。インジェクション付45psのFFで5速MT。サイドプロテクター、フルホイールキャップ、フルトリム内装などを標準装備。4×4もi.e.仕様のみになった。
■パンダSUPER i.e. 直4SOHC 999㏄+インジェクション 45ps 5速MT左ハンドル

1990年6月:SUPER i.e.のブラックボディをベースに、エアコン、パワーウインドー、13インチアルミホイール、オーディオなどを装備した、スポルティーバを限定発売。
■パンダ スポルティーバ 直4SOHC999㏄+インジェクション 45ps 5速MT 左ハンドル
1991年4月:1000CLをベースに、富士重工製ECVTミッションを搭載した、セレクタを300台限定で国内販売。初の右ハンドル。エンジンは直4SOHC 999㏄+1キャブ 44ps/8.2kg-m。また、4×4 i.e.をベースに、アパレルブランドSISLEYによりコーディネートされたモデルを200台限定で国内販売。ルーフラック、ボンネットエアインテーク、専用ボディカラーや専用インテリア、インクリノメーターなどを装備する。両グレード共その後、そのままレギュラーモデルとして設定される。
■パンダ セレクタ 直4SOHC 999㏄+1キャブ 44ps ECVT 右ハンドル
■パンダ4×4 i.e. SISLEY 直4SOHC999㏄+インジェクション45ps 5速MT 左ハンドル
1990年10月:日本の輸入元が、フィアット・アンド・アルファ・ロメオ・モータース・ジャパンに移行。チェッカーモータースはディーラーに。取り扱いグレードは継続。
1992年4月:フロントグリルの形状を変更。仕様と装備を見直すなどした後期型を日本で発売。グレードを3つに整理。
■パンダ スーパー 直4SOHC 999cc+インジェクション 45ps 5速MT 左ハンドル
■パンダ セレクタ 直4SOHC 999cc+1キャブ 44ps ECVT 右ハンドル
■パンダ4×4 CLX 直4SOHC 999㏄+インジェクション45ps 5速MT 左ハンドル
1993年11月:FIREユニットの排気量を1108㏄に拡大し、50ps/8.6kg-mとした新エンジンを日本仕様全車に搭載。グレードはスーパー、当初限定150台でそのままレギュラー化したECVT仕様のMIA、4×4の3種。全車クーラー、ステレオを装備。ECVT仕様も左ハンドルに戻った。
■パンダ1.1スーパー 直4SOHC1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps 5速MT 左ハンドル
■パンダ1.1 MIA 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps ECVT左ハンドル
■パンダ1.1 4×4 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps 5速MT左ハンドル

1995年10月 : 仕様を見直し、再びクーラーやステレオをオプション化して価格を引き下げた。グレード名も見直された。
■パンダ1.1CLX 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps 5速MT左ハンドル
■パンダ1.1 セレクタ 直4SOHC 1108㏄ + 電子制御燃料噴射 50psECVT 左ハンドル
■パンダ1.1 4×4 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps 5速MT左ハンドル
1996年:1.1CLXと1.1セレクタのメタルトップ、ブラックボディをベースに、アルミホイール、ルーフレール、スポイラー、レザーステアリング&シフトノブなどを装備した、CLXスポルティーバを限定発売。
■パンダ1.1CLXスポルティーバ 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps 5速MT 左ハンドル
■パンダ1.1 セレクタ スポルティーバ 直4SOHC 1108㏄+電子制御燃料噴射 50ps ECVT 左ハンドル
1996年秋:1.1CLX(5速MT)の日本市場での販売を終了。
1998年:日本仕様1108㏄エンジンの最高出力が52psとなる。最大トルクや回転数に変更なし。
1999年:残る2グレードの日本市場での販売を終了。その後OHVエンジンのヤングやホビーが並行輸入される。
2003年:初代パンダの生産を終了
【TOPICS】変わり種パンダたち


20年以上の長きにわたり生産された初代パンダだけに、日本には輸入されなかった、非常にユニークな仕様も存在した。例えば1990年から生産されたエレットラは、時代を先取りした電気自動車。ただし最高速度70 km/hで航続距離も70 kmと、実用性は低かった。またスペインのセアトがライセンス生産したパンダは、同社とフィアットの提携解消後、1987年からマルベーリャの名で、前後のデザインを変更して生産された。
Text:中島秀之 PHOTO:宮越孝政
Special Thanks:コレツィオーネ http://www.collezione.co.jp/
TIPO 2018年4月号より転載