【モデルカーズ】映画『フォードvsフェラーリ』公開から6年……モデルカーであの興奮をふたたび【FORD GT40】

ティーポ読者諸兄ならば、実際に劇場まで足を運んで鑑賞した方も少なくないであろう、映画『フォードvsフェラーリ』。映画としては非常に面白いが、フェラーリ好きやレース好きなど、観る人によっては「うーん」と唸ってしまうような描写も見受けられるかもしれない。何を美談とするか、あるは何が正義なのか……判断が分かれるところでもある。もちろんドキュメンタリー映画ではないので、ところどころ“盛って”あったり、史実と異なる“脚色”があるのは致し方ない。しかし、フォード GT40というレーシングマシーンが初挑戦からわずか3年でル・マン24時間を制した、というのは確かな事実であり、それをして偉大だと表現することに異論をはさむ余地はないだろう。

GT40は「レース、特にル・マン24時間での勝利こそが一番の広告、企業のイメージアップになる」と考えた大フォードの戦略を受けて開発がスタートした。さらに買収話のもつれから「打倒フェラーリ」の意図もあったとされるが、真実は当事者のみが知るところだ。大企業らしく即結果が求められ、その最適な方法として、自社でゼロからマシーンを開発するのではなく、すでに実績のあるコンストラクターとの協業が模索され、新型車、ローラGT MK VIを発表したばかりのエリック・ブロードレイ率いる英国のローラ・カーズに白羽の矢が立った。
GT40はこのローラGT MK VIをベースに1963年8月に開発が始まり、1964年4月に行われたル・マンのテスト・デイでサーキット・デビューを果たしている。しかし、さすがの大フォードであっても、一夜にしてル・マンを制するマシーンを製作できるはずもなく、1964年と1965年のル・マンは全車リタイアを喫している。1965年からはテコ入れとして、GT40のマシーン開発やレース活動の体制主体はコブラで実績を積んだキャロル・シェルビー率いるシェルビーアメリカンに委ねられることになる。またエンジンもマスタングなどにも搭載されたスモールブロック(4.7リッター)V8をベースにしたものに加え、フルサイズ用のビッグブロック(7リッター)V8も追加されるなど、GT40はハード、ソフトの両面から大変革がなされた。

そして迎えた1966年のル・マン24時間、総勢13台のGT40が、7台のフェラーリを迎え撃つという陣容でスタートする。GT40はワークス組の7リッターV8を積んだMK IIが8台、プライベーターの4.7リッターのMk Iが5台という体制だったが、うち完走を果たしたのは4台のMK IIのみという消耗戦でもあった。ちなみにフェラーリは朝を待たずに全滅している。この結果から分かるのは、7リッターという排気量にもかかわらず、最高出力485馬力(1リッターあたり約70馬力)程度の控え目なチューンに抑えることで耐久性を高めたMk IIの優位性で、エンジン単体の重さを加味しても耐久性を重んじたフォード陣の采配の確かさが感じられる。

今回紹介するのは、その1966年のル・マン24時間のゴールラインをほぼ横並びで駆け抜けた3台のモデルカーである。ヘンリー・フォード2世が見守る中、フォードの圧勝を印象付けるためにランデブー走行が編成されたものの、走行距離から逆算されて一番先にゴールラインを踏んだGT40開発の最大の功労者のケン・マイルズのマシーンが2位になる番狂わせがあったが、結果としてフォードとしての目的は果たされたのである。翌1967年のル・マン24時間も、前年の勝利がフロック(まぐれ)ではなかったことを証明するかのように、フォードはキャロル・シェルビー主導で開発したオール・アメリカン製のニューマシーン、フォード MK IVで優勝を果たしている。そのMK IVの基礎となった通称Jカーの開発中に、ケン・マイルズが帰らぬ人となったことは『フォードvsフェラーリ』の中でも描かれている。
モデルは日本のハイエンド・レジン製モデルカー・メーカーの草分け、『メイクアップ』製。原型は豊富な資料を基に3D CADで設計されたもので、あらゆるアングルから見ても“GT40らしさ”が破綻しないように徹底した考察が行われている。ボディはレジン製で、灯火類や金属部品はエッチングやメッキ掛けしたホワイトメタル製のパーツで表現されている。ホイールは真鍮切削原型をホワイトメタル製鋳造部品に置きかえたものを、塗装して装着。内装はシート表面の通気口(ハトメ)にいたるまで事細かに再現している。
ゼッケン#1が『フォードvsフェラーリ』では主人公のひとりとなったケン・マイルズ/デニス・フルム組の2位入賞車、ゼッケン#2がクリス・エイモン/ブルース・マクラーレン組の優勝車、ゼッケン#5がロニー・バックナム/ディック・ハッチャーソンの3位入賞車となる。各自、好みの1台を選ぶのも悪くないが、やはり大枚をはたいてでも、3台並べて1966年のル・マン24時間のフィナーレを机上で楽しむのが吉と言えそうだ。
■メイクアップ商品ページ https://www.makeupcoltd.co.jp/products/detail/708

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