【モデルカーズ】日本人ドライバーのル・マン初優勝の時をフラッシュバック【McLaren F1 GTR 01R】

【モデルカーズ】日本人ドライバーのル・マン初優勝の時をフラッシュバック【McLaren F1 GTR 01R】

ル・マン24時間(以下ル・マン)――。古くは1973年から始まった日本人ドライバー/日本車のル・マンへの挑戦ではあるが、それがグッと身近になったのは、競技車両がグループC規格となった1980年代。ポルシェが憎らしいくらい強いのは変わらなかったが、それでもなんとか日本車でも“歯が立つ”ようになってきたのがその頃だ。優勝こそ叶わないものの日本車が善戦する姿にシンパシーを覚え、TVに噛り付く、あるいは現地まで足を運んだ熱心な日本のモータースポーツファンも少なくなかった。その流れの頂点とも言えるのが1991年、日本のマツダが誇る、唯一無二のロータリー・ロケット、マツダ787による、日本車初のル・マン総合優勝の栄冠だろう。

photo:Mazda

その4年後の1995年のル・マン、これまでの日本人ドライバー/日本車の初参戦、日本車初優勝に続く、同レース史における3度目の“日本初”が実現した。それが関谷正徳選手による日本人ドライバーの初優勝である。マシーンは英国籍のマクラーレンF1だが、車体に大きく描かれたロゴからも分かるようにメインスポンサーは日本の上野クリニック/国際開発が務めており、非常に日本色の強い1台であった。

#59 McLaren F1 GTR 01R photo:McLaren

関谷選手の駆ったゼッケン59番のマクラーレン F1 GTR 01Rだが、実はこのマシーンも関谷選手自体のエントリーも、当初の予定には無かったものであることは良く知られるところ。1995年のル・マンにマクラーレンが参戦を予定していたF1 GTRは全6台で、それは新車ベースで製作されたマシーンとなる。ところが、マクラーレンF1のル・マン参戦のニュースを聞きつけて、熱心な同車のファンでもあった上野クリニック/国際開発の代表、佐山元一氏もスポンサードに名乗りを上げたが、すでに事前に予定されていた6台は先約があったため、急遽7台目のF1 GTRが用意されることになった。しかし、ゼロから新車を製作する時間的な猶予もなく、F1 GTRの開発テストベッド車両の01Rが本戦車両として引っ張り出され、結果優勝してしまったのである。

photo:McLaren

1995年のル・マンは“雨に祟られた”とも言われる悪コンディションで、スピンやクラッシュが相次ぐなか、マクラーレン F1 GTRは総合優勝したゼッケン59号車の他、3位、4位、5位、13位という順位でフィニッシュしている。マシーン自体はすでに欧州のBPRグローバルGTシリーズなどで圧倒的な強さを見せていたが、ル・マンには初参戦でこの戦績は驚異的といっても良いだろう。

McLaren F1 Photo:McLaren

マクラーレン F1 GTRのベースカーとなったF1はもともとは史上最良のロードゴーイングスポーツカーを目指して、数々の名レーシングカーを生んだ名匠、ゴードン・マレーの指揮のもと開発された車両。カーボンコンポジット製のモノコック構造や車体中央に運転席、その両脇に助手席を配置するといったロードカーとしては独創的なレイアウトを採用し、価格も約1億円ということから話題を呼んだことも記憶に新しい。同車はその生い立ちを聞く限りは意外だが、当初はモータースポーツでの使用を前提としていなかったというが、基本設計自体はレーシングカー寄りのため、外観に空力パーツを追加し、足回りやブレーキ、そしてエンジンの強化など、非常に手数の少ないリファインで高い戦闘力を得ることに成功。つまるところ、ベースのF1のポテンシャルの高さが立証されたというわけである。

メイクアップのモデルは、実車から採取した3Dスキャンデータを元に設計。1/18のスケールとしてもっとも実車に近く見えるようにボディの面表現やディテールの解像度を調整する工夫が凝らされている。車体はレジン製、ウィンドウパーツやヘッドライトカバーなどはインジェクション成形部品、ホイールは精緻なモールドと剛性を保持するABS製のインジェクション成形部品を使用している。ボディは、ガンメタとブラックの塗り分けは塗装、ロゴ類はデカールでの再現となり、その上からクリアコーティング塗装を施したのち、1台1台手作業で鏡面状態にまで仕上げているなど、その清潔感は圧倒的。

車体は一体成型ゆえに、ドアやカウル類の開閉ギミックは備わらないが、インテリアはメーター類かシートベルトなど細部まで実車を再現。エンジンルームも遮熱版やその奥に覗くエンジン類も、見える部分はマテリアルの質感表現にも拘って実車を忠実にトレースしているので、非常にリアリティの高い1台に仕上がっている。

車種選定から、取材、設計および製造にいたるまで、すべて自社で行うメイクアップ社のモデルカーの出来栄えは同業者からも一目置かれるほど。その徹底した品質管理は、創業47年という同社の歴史の中で培われてきたものである。値段は8万2500円(税込)とかなり張るが、ミニカーにまったく興味の無いという方でも、物としての良さをしっかりと認識できるはずだ。【メイクアップ】マクラーレン F1 GTR 01R商品ページ=https://www.makeupcoltd.co.jp/products/detail/1820

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