【東京→岡山・長距離試乗】フィアット600ハイブリッドで600Kmを走る!【後編】
新たに国内導入されたフィアット600ハイブリッド。ロングツーリング試乗記【前編】はモデル解説が中心となったが、この後編では最終目的地である岡山国際サーキットまでの試乗インプレッションをお届けしよう。

チンクエチェントを2台乗り継ぐほどフィアット推しメンである、ティーポ編集長の佐藤考洋が長距離インプレッションに志願。実は帰路もセイチェントを運んだので、合計1200Km以上を走破したことになる。
早朝に東京都内の編集部を出発したものの、すぐに祝日・海の日を含む3連休の大渋滞に捕まってしまった。だがストップ&ゴーの繰り返しでも、モーターのスムーズな発進のおかげでギクシャク感がなく、渋滞時特有のストレスを感じさせない。アクセル操作によってエンジンへの切り替わりも穏やかで違和感は少ない。さらにアダプティブ・クルーズ・コントロールを作動させれば、前走車に合わせて完全停止まで自動でこなしてくれる。渋滞の長い首都高3号線から東名高速道路では、この装備のありがたさを改めて痛感した。
御殿場を過ぎて渋滞を抜けると、ようやく高速巡航へ。アベレージ速度の高い第二東名では基本はエンジン主体だが、必要に応じてモーターが加勢し、加速に厚みを加える。6速DCTは節度あるシフトフィールを持ち、パドルシフトでのマニュアル操作にもキビキビと応答。追い越し車線での加速は軽快で、長距離移動に十分な余裕を感じさせた。高速での直進安定性も良好で、コンパクトSUVとしては静粛性も上々。ロードノイズや風切り音はきちんと抑えられており、ドライバーも同乗者もリラックスして過ごせる。

丸いメーターナセルや2スポークステアリングなど、初代セイチェントからインスパイアされたインテリア。600ハイブリッドLa Primaのダッシュボードはアイボリーとなり、インフォテイメントを担う10.25インチ液晶ディスプレイは、ナビ機能を備えるほかスマホアプリとの連携も可能だ。FIATロゴ配したホワイトのシートにはエコレザーを採用。2段式フロアボードのラゲッジルームの容量は385Lで、6:4分割可倒式のリアシートを活用すれば多彩にアレンジできる。
快適性に関しても申し分ない。FIATロゴ入りのシートは白い表皮が明るく車内を彩り、座り心地はしっかりとしたサポート感がある。さらにアクティブランバーサポートには簡易的なマッサージ機能まで備わり、長時間ドライブでも腰の疲労を軽減してくれる。インテリアは全体的にポップで軽快な雰囲気を演出しつつ、最新のインフォテインメントを標準装備。「Apple CarPlay」や「Android Auto」といったスマホアプリとの連携はもちろん、視認性の高いデジタルメーターを備え、現代的な利便性をしっかりと押さえている。
観光客で賑わう京都の街中では、再び慢性的な渋滞に見舞われた。しかしここでもストップ&ゴーの連続を難なくこなせる回生ブレーキのセッティングが光る。やや強めに効くため、アクセルを戻すだけで自然に減速して、ブレーキペダルに足を移す機会は減る。慣れてくるとワンペダル感覚で走ることもできるから街乗りでも非常に便利だ。古い町並みにスカイブルーの600ハイブリッドが映える姿は、イタリア車ならではのデザイン力を改めて実感させるものだった。
燃料は京都から再出発した時点でも半分以上残っており、ここまでの実質燃費は20km/Lと好成績。モーターのアシストが効率を高め、長距離移動でも財布に優しい結果となった。初日の滞在地である兵庫・播州赤穂の手前で初めての給油となったが、600Km程度の高速道路移動なら無給油で到達できることが確認できた。その後、岡山・美作までの残り区間も順調に走り切り、ストレスも疲労もないから、到着時には「もっと走っていたい」と思わせる余裕すら残していた。

初日の滞在地となる兵庫県相生駅に向かうべく山陽自動車道・龍野西ICを降りて初給油。ここまで約590Kmの平均燃費は20Km/Lで燃料も余裕アリ。
600ハイブリッドは、走り・サイズ・デザイン、そして出しゃばり過ぎないキャラクターを高次元でバランスさせた一台だ。日常の足としての扱いやすさと、ロングドライブでの安心感を両立しつつ、所有する楽しさを与えてくれる。笑顔になる遊び心と、現実的なユーティリティ。その両面を満たしている点こそが、このクルマの最大の魅力だろう。ピュアEVの600eと600ハイブリッドの二本立てによって、それぞれのライフスタイルに合わせたパワートレインが選べる。どちらを選択しても、毎日の移動が楽しい時間になることは間違い。

【FIAT 600 Hybrid La prima】
全長×全幅×全高 : 4200×1780×1595mm
ホイールベース : 2560mm
トレッド(F/R) : 1535/1525mm
車両重量 : 1330kg
エンジン形式 : 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 : 1199cc
最高出力 : 136ps/5500r.p.m.
最大トルク : 23.5kg-m/1750r.p.m.
モーター最高出力 : 21.8ps/4264r.p.m.
モーター最大トルク : 5.2kg-m/750-2499r.p.m.
トランスミッション : 6速DCT
サスペンション(F/R) : ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R) : ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(F&R) : 215/55R18
価格 : 419万円
**問合せ先:ステランティスジャパン ℡0120-404-053 **
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